第63回全日本吹奏楽コンクール
    平成27年11月1日(日)/名古屋国際会議場センチュリーホール

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    高校・後半の部

    1東関東 千葉県 柏市立柏高等学校 (指揮/石田修一) ※4年連続26回目

    4/天雷无妄(天野正道)

    明るくバランスの良いサウンドで華やかなオープニングでした。木管楽器が奏でる旋律は良く歌われていましたが、少々作為的な印象。トリオのトランペットのベルアップは音色を損ねてしまい逆効果と思いました。自由曲は冒頭のトランペットのファンファーレを期待していたので、ちょっと残念。ただ、ファゴットを始めとしたソロ群の秀逸さ、Tuttiでので安定感としなやかさは抜群でした。3年連続15回目の金賞受賞です。


    2西関東 埼玉県 春日部共栄高等学校 (指揮/織戸祥子) ※4年連続11回目

    5/シンフォニエッタ第2番「祈りの鐘」(福島弘和)

    課題曲では冒頭から各パートがしっかり歯車を噛み合わせ、良い感じでスタートしたのですが、曲が進むにつれて、詰めの甘さも散見してきました。Tuttiでの音量がこのホールでは大き過ぎる印象で、全体的に雑な印象を受けます。自由曲は重厚なサウンドでスケールの大きい演奏でした。アンサンブルは非常に正確で、ソリストもレベルの高いものを披露しましたが、課題曲同様、金管セクションが強奏になると音色を損ねるほどの音量過多だったのが残念です。

    3九州 長崎県 活水中学・高等学校(指揮/藤重佳久) ※初出場

    2/ルイ・ブージョアーの讃歌による変奏曲(C.T.スミス)

    今大会で最も注目されたバンド。プレッシャーも大きかったことでしょう。マーチは大変重厚なサウンドで、骨太で躍動感のある仕上がりでした。自由曲もコラールでのオルガンサウンドや目の覚めるような早いパッセージを吹き切るところは見事。しかし本来トランペットソロの部分をピッコロとB.サックスのソリにしてしまうところは個人的には好きではありません。これだけ吹けるのですかトランペットで吹いて欲しいです。当然ながら精華女子高版ルイブルのコピーとなりましたが、たった半年で無名バンドがこの水準まで高められてきたことは頭の下がる思いです。演奏後に藤重先生が小さく「ガッツポーズ」をしていたのが良かったです。

    4四国 愛媛県 愛媛県立伊予高等学校 (指揮/長谷川公彦) ※2年連続22回目

    5/歌劇「エレクトラ」より エレクトラの勝利の踊り(R.シュトラウス/田村文生)

    非常にシャープなサウンドで、よく練られた緻密なアンサンブルを聞かせました。良い意味で緊張感を醸し出した課題曲だったと思います。エレクトラは色彩豊かなスタート。木管セクションの流麗な響きと自在な表現力が素晴らしいです。Tuttiでサウンドが濁ったり乱れたりと、時折集中力が途切れる部分があったのが残念でした。しかしながら毎回新しい作品に挑む姿勢は素晴らしいです。今後もこの方向性を目指してほしいと思いました。

    5九州 福岡県 福岡工業大学附属城東高等学校 (指揮/武田邦彦) ※2年連続29回目

    2/キリストの復活 〜ゲツセマネの祈り〜(樽屋雅徳)

    ブリリアントなサウンドで明るいマーチでした。金管主体のサウンドで堂々たる演奏でしたが、若干リズムが重いことと強奏が大き過ぎるのが気になりました。自由曲は充実した低音群が好演。重厚なサウンドと共にドラマティックな音楽を披露しました。場面転換もスムーズでメリハリのある構成、コーラスも取り入れるなど色彩感と変化に富んだ演奏を聞かせました。

    6西関東 埼玉県 埼玉栄高等学校 (指揮/奥章) ※3年連続24回目

    5/歌劇「アンドレア・シェニエ」より(U.ジョルダーノ/宍倉晃)

    後半の部の白眉。現代曲でありながらも表情豊かで、この課題曲の新しい魅力を感じました。流麗かつ透明感のあるサウンドで、非常に品のある優美な演奏を聞かせました。自由曲は鍵盤打楽器とハープのアンサンブルに続き、コーラスが加わるという印象的な幕開け。決して力まず、陶酔感すら覚えるようなサウンドがホールに満たされていきます。全編にわたり「歌」を大切にした豊かでしなやかな演奏は、本日一日通して随一と感じました。2年ぶり18回目の金賞受賞です。

    7北陸 福井県 福井県立武生商業高等学校 (指揮/植田薫) ※3年連続3回目

    5/オール・デウーヴル(黛敏郎/長生淳)

    サウンドが雑然としており、大味な印象を受けました。この手の課題曲はもっとタイトに詰めてほしい気がしますが、発音が不鮮明で音楽の輪郭がはっきりしなかったのが残念でした。自由曲は一転、非常に変化に富んだ作品を実に楽しく演奏されました。課題曲とは違うバンドかと思うくらい水を得た魚のようです。メンバーの中には芸達者も揃っており素晴らしいと思います。まるでコンサートを聴いているような雰囲気でホールの空気を変えたように思います。初の銀賞とステップアップです。

    8関西 大阪府 大阪府立淀川工科高等学校 (指揮/丸谷明夫) ※5年連続36回目

    2/大阪俗謡による幻想曲(大栗裕)

    明るくバランスの良いサウンドで、正攻法の演奏を聞かせました。小細工やごまかしのない王道のマーチです。旋律の自然な歌い方とツボを押さえた伴奏と打楽器、高校生らしい溌剌とした演奏で素晴らしいです。自由曲はこのバンドの十八番。何をどうすればよいか指揮者が全てを掌握し、奏者がしっかりと応えています。楽器の発音がクリアで、一つひとつの音に主張が感じられました。オーボエのソロも神々しく秀逸でした。淀工による大阪俗謡は何度聞いても神がかり的な感銘度がありますね。5年連続28回目の金賞受賞です。

    9東京 東京都 東海大学付属高輪台高等学校 (指揮/畠田貴生) ※2年連続10回目

    4/交響曲第8番より 第4楽章(A.ブルックナー/檜貝道郎)

    非常にまとまったサウンドで、この熱いマーチを表現しています。よく研究されており、集中力の高い演奏で、個人的には全部門通じて一番好きな課題曲4でした。管楽器の技術の高さはもちろん、打楽器の巧さが光っていました。自由曲ではトランペットがロータリーに、ホルンがワーグナーチューバに持ち替えるなど、原曲の音楽を追及する拘りを感じました。サウンドの重厚さは見事でしたが、弱奏部分で若干の不安定さが見えたのが残念。30分近くある曲を8分強にカットするなど賛否あると思いますが、こういった新しい選曲への挑戦は称賛したいと思います。

    10東北 宮城県 聖ウルスラ学院英智高等学校 (指揮/及川博暁) ※4年ぶり2回目

    5/管弦楽のための協奏曲(三善晃/遠藤正樹)

    サウンドが硬質ではありましたが、アンサンブルもうまく、流れの良い課題曲だったと思います。強奏時のボリュームが大き過ぎて、硬く痛い感じのサウンドになっていたのが惜しいです。自由曲は超難解な三善作品。東北のバンドらしい選曲にもファンとしては嬉しい限りです。高い技術でしっかりと音にしていたところは素晴らしいと思いますが、そこから更に何を主張したいのか不明瞭な印象を受けました。

    11東海 愛知県 愛知工業大学名電高等学校 (指揮/伊藤宏樹) ※3年連続38回目

    2/永劫の翼 〜ジョン・フレミングの法則(八木澤教司)

    明るく柔らかいサウンドで華やかなオープニングを飾りました。ポイントをしっかり押さえた演奏で、マーチの聞かせ方を心得た好演でした。自由曲は柔らかさに色彩感が加わり、音の広がりが素晴らしいと思います。委嘱作品としての気合いが感じられ、場面転換の巧さや見せ場を掌握しているようです。メリハリのある構成で各ソリストも質の高い音楽を披露していました。特にサックスが素晴らしかったことを付け加えておきます。

    12中国 島根県 出雲北陵高等学校(指揮/原田実) ※2年ぶり9回目

    5/ルイ・ブージョワーの賛歌による変奏曲(C.T.スミス)

    艶のあるサウンドで表現豊かな課題曲でした。ポイントを押さえた演奏で、各ソリストも秀逸でした。スミスは豪華絢爛なサウンドでスタート。楽器の発音がクリアで非常に滑舌が良いです。オーボエのソロも艶があり表情豊かでしたし、トランペットソロもクリアなサウンドで見事吹き切りました。ブラボーです。長い課題曲のため、自由曲のカットがどうしても強引になってしまい、逆に音楽の流れを妨げていたのが残念でした。

    13北海道 札幌地区 東海大学付属第四高等学校 (指揮/井田重芳) ※4年連続33回目

    2/森の贈り物(酒井格)

    柔らかく透明感のあるサウンドで、力みの無い自然体なマーチに癒されました。落ち着いたテンポで正統派な演奏です。特にトリオは優美で美しい仕上がりでした。自由曲は包み込むようなサウンドと、コルネットソロのアンサンブルが秀逸。コルネットソロは大変美しく見事。ブラボーでした。Tuttiでも決してうるさい響きにはならず、ホールいっぱいに温かいサウンドが広がります。この作品の幻想的な世界感をしっかり形にしており、音楽的に圧巻の演奏でした。4年連続19回目の金賞受賞です。

    14中国 岡山県 岡山学芸館高等学校 (指揮/中川重則) ※2年連続13回目

    2/交響曲第3番より 第2・3・4楽章(J.バーンズ)

    重厚なサウンドながらもマーチのツボを押さえた演奏でした。自然な表現でトリオが非常に美しい響きでした。自由曲では短い時間の中に、第2〜4楽章を無理やり詰め込んだので音楽の流れを妨げていたように思います。しかしながら第3楽章の深くしっとりとした表現は感動的でした。オーボエとイングリッシュホルンのソロが秀逸です。第4楽章での弾けるようなサウンドとバンドの一体感が見事。圧巻のサウンドを聞かせ、会場を大いに沸かせました。素晴らしかったです!

    15東関東 神奈川県 横浜創英中学・高等学校 (指揮/常光誠治) ※2年連続8回目

    2/華麗なる舞曲(C.T.スミス)

    明るく華やかなサウンドで躍動感のあるマーチでしたが、雑然とする部分が多く、まとまりに欠けた印象です。自由曲は難曲を良く演奏していましたが、ちょっとテンポ設定が速すぎたようです。言葉は悪いですが勢い先行的な演奏で、音符を消化しきれていないです。各ソロのフレーズも大味すぎるアゴーギクで、何を伝えたいのか不明瞭なまま曲が進んでいった感がありました。作為的な部分が多く、もう少しストレートな音楽を聞きたかったです。


    ※出場回数には、招待演奏、特別演奏を含んでおりません。


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