第63回全日本吹奏楽コンクール
    平成28年10月23日(日)/名古屋国際会議場センチュリーホール

    Back

    Next

    高校・後半の部

    1西関東 埼玉県 春日部共栄高等学校(指揮/織戸祥子) ※5年連続12回目

    5/吹奏楽のための協奏曲(高昌帥)

    課題曲では大味な表現で全体的に雑然とした演奏になってしまいました。ところどころで音楽の流れが止まる箇所もあり、消化不良な演奏に聞こえました。自由曲はスケールの大きい作品ですね。力強い金管セクションのファンファーレからスタート、重厚なサウンドが美しかったです。全体的にf〜fffの音楽が続き、ほっとする部分も欲しいと感じました。


    2東京 東京都 東京都立片倉高等学校(指揮/馬場正英) ※4年連続13回目

    4/吹奏楽のための交響曲「ワインダーク・シー」より(J.マッキー)

    どの楽器もバランスよく鳴らしており、音の輪郭がクリアなサウンドです。課題曲はメロディラインが鮮明で、躍動感のあるマーチになっていました。トリオでの優美なサウンドを挟んで終曲に向かうまとまりが素晴らしいと思います。自由曲で神秘的な雰囲気をよく醸し出しており好演です。サックスのソロが非常に美しく、伴奏もバランス良くソロを引き立てていています。ラストの盛り上がりも見事で、会場を大いに沸かせました。

    3東海 愛知県 愛知工業大学名電高等学校(指揮/伊藤宏樹) ※4年連続39回目

    1/交響詩「モンタニャールの詩」(J.ヴァン・デル・ロースト)

    端正なつくりのマーチでした。ストレートな表現が実に清々しく、強奏になってもサウンドが破たんせず、バランスの良さは見事です。モンタニャールは実に音楽の流れがよく、場面ごとに移り変わる色彩鮮やかなサウンドが格別でした。ところどころオルガンを思わせるような豪華絢爛なサウンドも聞かれ、個人的には好きな演奏の一つです。

    4北陸 富山県 富山県立高岡商業高等学校(指揮/神田賢二) ※3年連続30回目

    1/交響詩「ローマの祭り」より チルチェンセス、主顕祭(O.レスピーギ/木村吉宏)

    高岡商業らしい重厚で骨太なサウンド。全体的にリズムが重く、バタバタしてしまったようです。トリオでのピッコロが実に美しく存在感を示していたのが印象的です。トランペットのソロは安定感があり秀逸でした。自由曲ではトランペットのバンダ隊が舞台上手前方にて演奏。良くそろったファンファーレを響かせました。チルチェンセスでは重厚なサウンドを活かした熱演を聞かせましたが、主顕祭では全体的にスピード不足で音楽の流れが重かったように思います。

    5中国 岡山県 明誠学院高等学校(指揮/稲生健) ※3年ぶり7回目

    1/歌劇「イーゴリ公」より ポロヴェッツ人の踊り(A.ボロディン/黒川圭一)

    決して派手さや華やかさはないものの、堅実でバランスよい端正なサウンドです。マーチは爽快なメロディと要所の決め所を押さえた演奏だったと思います。自由曲では冒頭から美しい木管アンサンブルが素晴らしい出来で、オーボエ、イングリッシュホルンのソロも秀逸でした。テンポが上がってからのクラリネットソロも実に軽快で見事。バンド全体が良くリズムをつかんでいて音楽がよく流れていました。中盤以降、機動力が実に素晴らしいのですが、表現のほうが平板になってしまい平凡な演奏に終わったしまったのが残念です。

    6東関東 千葉県 習志野市立習志野高等学校(指揮/石津谷治法) ※5年連続30回目

    1/バレエ音楽「三角帽子」より
    近所の人たちの踊り、粉屋の踊り、終幕の踊り(M.ファリャ/石津谷治法)

    冒頭から習志野サウンドが響きわたりました。柔らかいサウンドながらもメロディラインがクリアです。全体的にビート感が弱く、マーチの躍動感やドライブ感があっても良かったと思います。自由曲では「粉屋」でのイングリッシュホルンをはじめとする各ソロも秀逸。「終幕の踊り」も隅々までよくアナリーゼされた演奏でしたが、全体的に不完全燃焼といったイメージで、もっと情熱的な盛り上がりが欲しかったです。

    7中国 岡山県 岡山学芸館高等学校(指揮/中川重則)※3年連続14回目

    1/フェスティバル・ヴァリエーション(C.T.スミス)

    重厚で安定感のあるサウンド。マーチは要所を確実に押さえていて、爽快な表現が心地よい演奏でした。自由曲でもバランスの良いサウンドとキレのある表現が良かったです。こちらもピッコロ、バスーン、トランペット、ユーフォニアムのソリが実にぴったり揃っていて見事。早いパッセージだけが注目されがちな作品ですが、中間部の緩やかな部分での豊かな表現が素晴らしく、緩急の対比がよく出ていて素晴らしかったです。

    8四国 愛媛県 愛媛県立伊予高等学校(指揮/長谷川公彦)※3年連続23回目

    1/交響的幻想曲「影のない女」(R.シュトラウス/田村文生)

    躍動感のある元気なマーチでしたが、表現が平板で、ハーモニーが乱れる箇所も見受けられたのが残念。曲が進むにつれ音楽が消極的になっていたのが残念でした。自由曲ではトランペット全員がB♭管からC管に持ち替えており、サウンドがより明るく鮮やかに変化するのに一役かっていました。課題曲とは別のバンドのように演奏が積極的で音楽の流れに勢いが感じられました。メリハリのある構成と緩急の巧さが光る演奏だったと思います。

    9東北 宮城県 聖ウルスラ学院英智高等学校(指揮/及川博暁) ※2連続3回目

    5/交響変奏曲(平吉毅州/遠藤正樹)

    シャープでキレのあるサウンド。冒頭のピッコロとフルートのアンサンブルは透明感があって美しい出来。複雑に絡み合う構成の作品ですが、どの楽器もピタリと合っていて非常に完成度が高いと感じました。自由曲は初めて聞く作品。とても難しい作品でしたが、キレのある演奏で引き込まれました。緊張感を持続させた音楽ながら、見事な世界を作り出しており、後半の自由曲ではもっとも奏者のエネルギーを感じられる名演だと思いました。ブラボーでした!

    10関西 大阪府 大阪桐蔭高等学校(指揮/梅田隆司)※4年連続9回目

    3/歌劇「ポーギーとベス」より(G.ガーシュイン/建部知弘)

    クリアでシャープ、しかも透明感さえ感じられるサウンドが見事。Tuttiはもちろんのこと、音の薄い部分でも安定感が抜群です。場面転換での表情の変化も鮮やかで非常に完成度・感銘度の高い課題曲になったと思います。自由曲では華やかなオープニングで一気に聴衆を引き込んだ感じです。特に個々の技術の高さがよくわかる演奏でした。メリハリのある構成でよく考えられたプログラムだったと思います。5年ぶり4回目の金賞受賞です。

    11九州 熊本県 玉名女子高等学校(指揮/米田真一)※3年連続8回目

    1/シネマ・シメリック(天野正道)

    非常にバランスが良い華やかなサウンドでスタート。クラリネットとサックスによる第一マーチの旋律がなんとも美しいです。流れるような歌い方と心地よいドライブ感が素晴らしく、トランペットソロも秀逸。この日一番の課題曲1だったと思います。自由曲では場面毎の表情の変わり方が鮮やかで、色彩感の豊かなサウンドが出色の出来栄えだったと思います。名古屋のホールとも相性が良いでしょうか、3年連続4回目の金賞受賞です。

    12北海道 札幌地区 東海大学付属札幌高等学校(指揮/井田重芳) ※5年連続34回目

    4/ウインドオーケストラのためのマインドスケープ(高昌帥)

    端正なつくりで正統派のマーチになりました。毎年感じますが、このバンドは常に自然体の表現が素晴らしいと思います。この日の課題曲4では出色の出来栄えといえるでしょう。ゆるぎない安定感は流石で、演奏に余裕すら感じました。マインドスケープでも重厚感のあるサウンドとキレのある演奏でした。中間部のオーボエを中心した甘美なアンサンブルは秀逸。立体的でスケールの大きい演奏で、感銘度の高い仕上がりになっていました。5年連続20回目の金賞受賞です。

    13東海 静岡県 浜松海の星高等学校(指揮/土屋史人) ※2年連続4回目

    3/エッセイ(高昌帥)

    クリアでシャープなサウンド。楽器の発音が鮮明で、課題曲はキレのある演奏でした。特に金管セクションのまとまりが素晴らしく、曲全体をよく引っ張っています。自由曲は大変難しい現代曲。冒頭の難しく早いパッセージも見事に吹き切り、一気に引き込まれました。低音楽器から高音楽器まで穴が無く、超絶技巧を要する作品をしっかり消化していたと思います。ラストのTuttiで歌い上げる部分は圧巻のサウンドで、個人的には金賞でも十分と感じた演奏でした。

    14東京 東京都 東海大学菅生高等学校(指揮/加島貞夫) ※3年ぶり5回目

    4/吹奏楽のための交響曲「ワインダーク・シー」より(J.マッキー)

    力みのないストレートな表現、骨太なサウンドながらも決して重くならず、心地よいドライブ感を伴ったマーチだったと思います。自由曲では金管セクションの巧さが発揮されていました。冒頭のホルンセクションを中心とした金管群のアンサンブルは素晴らしかったです。決してオーバーブロウせずによくコントロールされている中で、最大のパフォーマンスを見せてくれました。ラストに向かう集中力の高さと高揚感にブラボーでした!

    15東関東 千葉県 柏市立柏高等学校(指揮/石田修一) ※5年連続27回目

    4/シネマ・シメリック(天野正道)

    一糸乱れぬアーティキュレーションにハーモニー、安定したリズム、細部にわたって気配りの行き届いた演奏は名門バンドらしい王道のマーチでした。自由曲は変化に富んだ作品ですが、豊かな表現と高い技術力で独自の世界を作り上げていました。弱奏になっても音楽が生きており、むしろ安定感すら感じるほど自信に満ち溢れた演奏だったと思います。4年連続16回目の金賞受賞です。


    ※出場回数には、招待演奏、特別演奏を含んでおりません。


    Back

    Next